天商を卒業した“あしながおじさん”
梅ヶ枝中央きずな基金10周年! 代表理事 山田会長へのインタビュー
森本 雅巳(高25回)・櫻木 直美(高42回)
山田 庸男
第6代天商同窓会会長
弁護士
梅ヶ枝中央法律事務所所長
元大阪弁護士会会長
公益財団法人梅ヶ枝中央きずな基金代表理事
現在、天商同窓会会長を務めておられる山田庸男会長(高14回)、ご自身がひとり親家庭で育ち奨学金制度を利用して天商へ通う事となった体験から、私財を提供し「きずな基金」を設立され本年、10周年を迎えました。これを記念して、お話を伺ってきました。
◆ きずな基金はどんな思いで創立されたのですか
『公益財団法人梅ヶ枝中央きずな基金』(以下きずな基金)は、私自身ひとり親家庭で育ったことと、戦後は貧しくても社会に「支えあうこころ」が溢れて心豊かな青春を送りました。でも、現在は資本主義が成熟し、格差が拡がって「努力をしないのが悪い」とか「収入が低いのは親のせいだ」とか、過度に自己責任が強調さ
れる「競い合う」社会になりました。おそらくこのような社会では能力がありながら高等教育を学ぶ機会をなくしている子どもたちは多くいると考え、平成25年10月「ひとり親家庭の子どもたちに学びの機会を」を理念にこの基金を設立しました。
この基金は、生活費を支援するのではなく、埋もれている中高生の能力を引き出すために学習塾の費用やスポーツ、音楽等の分野での活動費用を支援する向上心のある子どもたちのための奨学金制度です。
実際には、毎年70名前後を給付型で支援をして毎年2千数百万円を支給しています。
餅つき大会
◆ 他の奨学金との違いはありますでしょうか。
「競争より共生」
きずな基金はこれまでに大学生等へ153名の卒業生を輩出していますが、現実にかなりの卒業生が国公立大学に進学しています。単に資金援助をするだけでなく人として成長できるように見守ることにも力を入れております。
当基金では、塾代等の経済的支援だけにとどまらず、年2回の子どもたちと卒業生を交えた交流会や、キャンプ・コンサート鑑賞・餅つき大会などを開催し、基金の卒業生らと交わるとともに、私達弁護士等が中心となって子どもたちの成長を見守りサポートするようにしています。それが特徴です。時には卒業生に悩みや進路を相談したり、先輩たちとのふれあいは良い刺激になっているようです。
またひとり親ならではの孤独感を感じながら頑張っている保護者も多いので、保護者同士の交流会「ゆるっと絆の会」も活動を始めました。家庭での笑顔は欠かせませんし、子どもの向上心を高めると思い大変期待しています。
勉学に励むことは大事ですが、あくまでも手段で、どんな社会人になるかが、より大事なことと思っています。
第1回キャンプ
第14回交流会
◆ 基金の支援を受けるためにはどういう審査があるのでしょうか。
今の社会には、経済的理由から十分に学ぶ機会を失った子供たちは沢山いますが、この基金では福祉的な視点での支援は原則としてしません。経済的困窮の中で一定の学力があり、さらに高等教育を受けるために塾に通いたいという子どもを選考しています。具体的には、志望理由、成績表、所得証明書等の書類審査をして、面接で決定します。
これらの選考には、私だけではなく8名の弁護士や新聞記者が担当し、公正に評価しています。
第2回キャンプ
◆ 天商で学ばれたことは役に立っていますか。
天商の「東西万里」の高邁な思想や自主独立を重んじる校風は、私の人生観に大きな影響を与え、その中から自然と社会あっての自分と思うようになり、事務所の理念も「他利の精神を隅々に」として額をかけています。天商には感謝をしてもしきれません。
◆ サポーター会員制度を新たに発足されたのですか。
これまでは、私の提供した私財の運用益と多くの人達の寄付金で賄ってきましたが、この活動を持続するためには経済的基盤を強化しておきたいと考えました。
それで、多くの人達からこの活動への理解を拡げて基金の経済基盤を強固にするべく『サポーター会員制度』を発足しました。
個人は年間1口5,000円、法人は1口10,000円で何口でも寄付することができます。この会費は公益財団法人への寄付として「寄附金受領証明書」が発行されますので税額控除の対象になります。
基金を必要としている子どもたちへ支援し続けていくためにこの制度を設けました。
第15回交流会
◆ 今後の予定について教えて下さい。
設立時は基金の知名度もなく、誰が運営しているのかも分からなかったので、私の事務所名を基金の名称に入れました。その方が安心だろうということから、財団名に「梅ヶ枝中央」という法律事務所名の一部を入れた経緯がありますが、今後は設立から10年が経ち、度々メディアに取り上げていただいた事などにより、大阪府下では相当周知され、活動内容も広く浸透したのか全く知らない方からのご寄付を受ける事もあるようになりました。
そのために、今後の基金の自立性、独立性を考えると、名称を変更しようと考えています。一番有力なのは、「未来を拓く公益財団法人きずな育英基金」です。
きずな基金の詳細は、ネットで検索するか、QRコードからアクセスしてみてください。
※設立10周年ということで記念誌が発行される予定とのことです。
TEL 06-6364-2802 / FAX 06-6311-1704